自然塗料とは~種類とその原料のまとめ

最近、自然塗料についての関心が高まっています。ホルムアルデヒドなど、化学物質が原因で健康を損なう人が年々増えている中、自然の素材を原料とした、人間や環境にも優しい自然塗料が注目されるのは当然の事かもしれません。

私自身は自然塗料の専門家というわけではありませんが、自然塗料に興味のある方、自然塗料を使ってみたい方などに役立つ情報をまとめました。ここでは特に自然塗料の種類とその原料についてまとめています。




自然塗料とは

自然塗料という言葉は耳にした事がある人は多いと思いますが、では自然塗料とは何なのでしょうか?

一般的には、化学物質を使わず、自然の原料で作った人間に優しい塗料というイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。しかし、現実には「自然塗料」と呼ばれているものであっても、一部の製品には化学物質を含んでいるものもあります。

また、化学物質は含んでいなくても、人によってはアレルギー反応を起こす物質が入っている場合もあります。自然塗料という言葉には、明確な定義はありません。

ドイツなど自然塗料の先進国では、厳格な基準があり、それにしたがった製品が自然塗料として販売されています。しかし、自然塗料として販売されているものすべてがこのような厳格な基準により作られているとは限らないのです。化学物質を含んでいても、メーカーが自然塗料と表現している場合もあるのです。

「自然塗料と書いてあるから安全で、人体に悪影響を与える事は絶対に無い」とは必ずしも言えないのです。また、化学物質を含んでいなくても、人によってはアレルギー反応を起こす物質が含まれている場合もあります。ですから、自然塗料を選ぶときは、成分を良く確認して選ぶことが大切になるのです。

自然塗料について

自然塗料は、古くからあるものですが、それを使いやすさや耐久性など、改良したものが近年多く販売されるようになって来ました。

自然塗料について多少知識のある人なら、自然塗料=ドイツというイメージを持たれる人が多いのではないでしょうか。現在ドイツには、自然塗料のメーカーが30社以上もあり、「アウロ」「リボス」「オスモ」「ビオファ」などよく聞く名前のほとんどがドイツのメーカーです。

しかし、自然塗料はドイツばかりではなく、日本にもあります。日本では古くから、家具の塗装に蜜蝋、桐油、荏油などが使われてきました。また、日本独自の自然塗料ともいえる、は家具や食器などに使われているのはご存知かと思います。他にも時代劇などで見かける、番傘には柿渋を塗って防水効果を得ていました。

また、米糠(ぬか)を木綿に包んだもので、柱や家具を磨いて艶出しを行なっていました。これもりっぱな自然塗料なのです。このように考えると、自然塗料というのは目新しいものではなく、古くから使われていたものだったのです。

自然塗料とは一体何を指すのか?

自然塗料について、「化学物質を含まず、自然の原料を使った、環境や人に優しい塗料」このように思っている人が多いと思います。

間違いではありませんが、実は自然塗料というのは明確な定義があるわけではなく、自然の原料を使用した塗料をメーカーが自然塗料と呼んでいる場合もあります。つまり、自然塗料と呼ばれているものでも、100%自然の原料によって作られた塗料とは限らないのです。

現に、自然塗料として市販されている塗料の中には、溶剤として化学物質を含むものも少なくありません。溶剤は、塗料が乾燥した時点では無くなってしまうので、結果的には化学物質を含まないということになるのですが、塗装が完全に乾燥するまでは、塗装部分から化学物質を放出していることになります。

例えば、床にこのような塗料を塗った場合、塗料が完全に乾くまでは溶剤の成分が家の中に放出され続けるわけで、家の中から完全に無くなるのは相当の時間を要すると思われます。
そうなると、自然塗料=安全な塗料・体に優しい塗料とは必ずしも言えないのです。

また、自然の原料であっても、人によってはアレルギー症状をおこすものもあります。ほとんどの自然塗料メーカーのサイトでは、塗料の成分を公開しています。もちろん、商品にも成分表示がありますのでしっかり確認してから使用することをおすすめします。

せっかく自然塗料を使ったのに体調が悪くなったのでは意味がありません。なお、自然塗料をベースにしてそれに樹脂などの化学物質を加えた塗料もあります。チークオイルなどがそれにあたります。化学物質を加えることにより、自然塗料の欠点を取り除いたものですが、これは自然塗料とは言えないと考えますのでこのサイトではふれていません。

自然塗料の種類

それでは実際に自然塗料の種類について見ていきましょう。

しかし解説の通り、一口に自然塗料といっていろいろな種類があります。 主なものは、オイルとワックスになりますが、他にも日本で古くから使われている漆(うるし)や柿渋も自然塗料です。

オイル系自然塗料

自然塗料の代表ともいえる、植物オイルを主成分とする自然塗料です。

植物性のオイルは、オイル単独で使えるものもありますが、塗料として販売されているものは、乾燥時間を短くしたり、塗りやすくするために溶剤で薄めたり、複数のオイルを混ぜたりしたものがほとんどです。また、顔料や染料を混ぜた着色塗料もあります。

塗料として使うオイルは、乾性油と呼ばれる空気中で完全に固まる性質をもったオイルで、桐油、荏油、胡桃油、亜麻仁油などがあります。空気中で粘度は高くなるが完全には固まらない半乾性油(コーン油・綿実油・胡麻油など)や、空気中では全く固まらない不乾性油(菜種油、オリーブオイル、椿油など)も、塗料として全く使えないわけではありません。

小さなものをひとつ塗るために、わざわざ工芸用のオイルを買わなくても、台所にあるオイルで代用するのも方法です。私も、オリーブオイルで塗装した事がありますが、そんなに悪くはなかったです。ただ、塗りすぎるとベトベトした状態になりますので、薄く塗って、乾いた布で何度も拭いた方がいいです。ただし、あくまでも代用ですので、きちんと仕上たい場合は、乾性油をお使いください。

植物オイルの分類

植物性オイルは、固化の程度によって、次のように分類されます。

乾性油

空気中で完全に固まる油です。亜麻仁油・桐油・芥子油・紫蘇油・胡桃油・荏油・紅花油・向日葵油などがあります。

半乾性油

空気中で粘度が高くなるが、完全には固まらない油です。コーン油・綿実油・胡麻油などがあります

不乾性油

空気中では固まらない油です。オリーブ油・扁桃油・落花生油・椰子油・椿油・菜種油など

以上のような分類から、木工品などの塗装に使う場合は、乾性油を使わなければなりません。市販されている塗装用の油は、亜麻仁油・桐油・荏油などの乾性油やこれらをベースにしたものが多くなっています。ただ、完全に固まらないのでべとついたり、ずっと湿ったような感じがする場合もあります。おすすめはしませんが、アクセサリーなどの小さなものなら、大丈夫かなという気はします。ただしあくまでも自己責任でやってください。責任はもてませんので。

ワックス系自然塗料

蜜蝋やカルナバ蝋などを主成分とする自然塗料です。

蜜蝋は、蜜を食べたミツバチ(働き蜂)が分泌するもので、これで蜂の巣を作ります。カルナバ蝋はブラジル北部に自生する、カルナバヤシの葉から抽出し、車のワックスや口紅などの原料にも使われています。

ワックス系の塗料は、それだけを木製品に塗る場合もありますが、基本的にはオイルフィニッシュで仕上げた上に、艶出しや表面保護の目的で塗ります。

漆は英語で「JAPAN」というくらい、日本独自の塗料で古くから家具や器に使われてきました。

ウルシの木の樹液を精製して作りますが、日本産のウルシは高価ですので、現在は中国産のウルシが多く使われています。また、人工ウルシとも呼ばれる、カシューという塗料もあり、ウルシの代用品として使用されています。

ニス

ニスというと化学物質を使ったものを連想しますが、自然の原料を使ったものもあります。

カイガラムシ(すべての種類ではなく、限られた一部の種類のカイガラムシのみ)の分泌物を精製して作った、セラックをアルコールで溶かしたものが、セラックニスあるいはシェラックニスという名前で販売されています。

ちなみにセラックはアルコールのみに溶ける性質があります。

柿渋

柿渋は日本で古くから、防腐、防水のために自然塗料として使用されてきました。

柿渋は、まだ熟す前の柿の実を砕いて汁を搾り、その汁を発酵させて作ります。時代劇などで見かける、番傘は和紙に柿渋を何度も塗り重ねる事によって防水効果を得ています。また、化学物質の防腐剤が出来るまでは、建築物の木材が腐るの防ぐ目的でも使用されていました。

柿渋は発酵させて作るため、乾燥するまでは臭いがきついので敬遠されてきましたが、最近は臭いのしない柿渋が開発され、見直されています。

自然塗料の原料

自然塗料には、様々な原料が使われています。種類についてマスターしたところで、その主な原料についても見ていきましょう。

亜麻仁油(あまにゆ)

麻に似た亜麻という植物の種から抽出される、自然塗料に使われるオイルの代表的なものです。

乾燥が遅く、時間経過とともに黄味が強くなるのが欠点ですが、安価で入手が容易なため、自然塗料のベースに使われることが多く、いろいろな塗料が販売されています。

桐油(きりゆ)

油桐(アブラギリ)という木の実から抽出される油です。

現在市販されているものは、中国原産の支那油桐(シナアブラギリ)の実から抽出されたものがほとんどでです。比較的乾燥が速く、亜麻仁油などと比べて耐水性が高く黄変が少ないのが特徴です。桐油は単独でも塗料として使用できますが、亜麻仁油など他のオイルを主成分とした自然塗料に、乾燥促進のために混ぜる事もあります。

荏油(えあぶら)

青紫蘇によく似た、荏胡麻(えごま)という植物の実からとれる油です。

韓国料理などでは、葉を食用にするので食べた事がある人もいるかと思います。日本で菜種油が普及するまでは、油といえばこの荏油の事をさしていました。乾性油の中ではもっとも乾燥が速い油です。

米糠(こめぬか)

米を精米すると出るのが糠(ぬか)です。

糠は多くの油を含んでおり、昔は糠を布袋に入れたもので、家の柱や家具など、家中を磨いていました。近年は、この米糠の油を抽出たものが自然塗料として販売されています。

胡桃油(くるみゆ)

胡桃の実の中にある仁(じん:食用とする部分)からとれるオイルです。

仁を木綿の布に包んだもので磨いても、艶出しなどの効果があります。

芥子油(けしゆ)

芥子(けし)の実をつぶして抽出したオイルです。

亜麻仁油などほとんどの植物油は薄黄色をしていますが、芥子油は無色透明で、油絵に使用する事が多いオイルです。亜麻仁油と比べると乾燥は遅くなります。

向日葵油(ひまわりゆ)

夏に咲くひまわりの種からとれる油です。

食用に使われる事がほとんどですが、自然塗料にも混ぜられているものがあります。

ローズマリーオイル

シソ科の植物で、葉はカレーなどの香辛料として使われます。また、アロマオイルとしても有名です。

ローズマリーに含まれる成分には、消臭効果や殺菌作用があり、防カビのために自然塗料に混ぜることがあります。

テレピン油

松脂を水蒸気蒸留して採取するオイルです。

空気中で徐々に酸化し、粘度が高くなりやがて樹脂状になります。溶剤として使用されます。

センブラ油

ヨーロッパの松からとれるオイルです。

防虫成分を含んでいるので、防虫剤として自然塗料に混ぜることがあります。

ユーカリ油

コアラの食料として有名な、ユーカリの葉から抽出されるオイルです。

艶出しや、ワックスの溶剤として使われています。

松脂(まつやに)

松の木から分泌される天然樹脂で、主成分はテレピン油とロジンです。

松脂を蒸留して採取したテレピン油は、塗料の溶剤や油絵の具の薄め液などに使われます。ロジンは滑止めとして野球などで使うロージンバックに使われています。

珪藻土(けいそうど)

藻の一種である珪藻の殻の化石が堆積してできた物質で、自然塗料にはつや消しのために使われる事があります。

ホウ砂(ほうしゃ)

鉱物の一種。ガラスに混ぜて耐熱ガラスの原料に使われる物質です。

自然塗料では、防腐、防虫、防カビの目的で混ぜます。

エタノール

お酒などに含まれる、エチルアルコールとも呼ばれるアルコールの一種です。

自然塗料に使われるほとんどの物質と容易に混ざるので、溶剤として使用されています。

シトラール

レモングラスや、レモンやオレンジ、山椒、生姜などに含まれる成分です。

溶剤として使われています。

レシチン

動植物のすべての細胞に含まれている成分です。

大豆レシチン、卵黄レシチンなど健康食品の成分としても有名です。油を水に分散させて乳化させたり、皮膚や粘膜から物質を透過吸収する浸透作用があるため、潤滑剤として使用します。

ダンマル樹脂

東南アジアでラワン属の樹木から採取される軟質樹脂です。

ニスの原料として使用します。テレピン油など揮発性の溶剤に溶かしたダンマル樹脂ワニスは、絵画の上塗りなどにも使用するため、大きな画材店などで容易に入手できます。

セラック(シェラック)

一部のカイガラムシが分泌する虫体被覆物を精製してつくる樹脂状の物質です。無味無臭で人体には無害です。

アルコール系の溶剤にのみ溶ける性質があり、セラックニスとして市販もされています。乾燥すれば、透明な皮膜を作ります。

蜜蝋(みつろう)

蜜蝋はミツバチが巣を作るために分泌する物質です。

蜜を食べた働き蜂が、腹部にある蝋線から蜜蝋を分泌しそれを集めて、巣を作るのです。蜜蝋は古くから化粧品やロウソクなどに使われてきました。そして、艶出しや表面保護のため、タンスなど木製品にも使われてきました。いわば天然のワックスなのです。

カルナバ蝋

ブラジル北部に自生する、カルナバヤシの葉から抽出され、化粧品(口紅、リップクリーム)、靴クリーム、車のワックスなどに使われています。

カルナバ蝋は、落とすとガラスのように割れるほど硬く、そのままでは使いにくいので通常は蜜蝋などと混ぜて使います。しかし、この硬さによって耐久性が高くすばらしい光沢をだすので、木製品の艶出しにも適しています。

ウルシ科のウルシノキ(漆の木)の樹液を加工したもので塗料として有名ですが、接着剤としても使用します。

漆は空気中の水蒸気がもつ酸素と、生漆に含まれる酵素の作用により常温で固まります。したがって、漆を塗った後は室(むろ)と呼ばれる、湿度を高くした部屋に入れて乾燥させます。

他の塗料は、湿度が高いと乾燥が遅くなったり艶がなくなるなど障害がでますが、漆の場合は湿度が高くないと乾燥しないという逆の性質を持っています。ウルシと聞くと「かぶれ」を想像する人が多いと思います。これはうるしの成分であるウルシオールによるアレルギー反応で、ひどい場合はウルシの木の下を通っただけでもかぶれる人もいます。完全に乾燥してしまえばかぶれることはありません。

柿渋

熟れる前の柿の実を潰し、搾った汁を発酵させたものです。渋の成分であるタンニンを多く含み防腐作用や防水作用があるため、古くは番傘や魚網などに使われていました。建築や木工の分野でも使われていますが、独特の臭いがあるのが難点です。最近は、無臭タイプの柿渋も販売されており、自然塗料として見直されています。

以上が自然塗料に関する解説と、種類・原料のまとめになります。具体的な取扱や注意点、塗り方については以下で解説しています。

関連記事:自然塗料の取扱の注意点とその塗り方~家具・テーブル・外装・内装