オリックス・伊藤光~明徳義塾が生んだ侍ジャパン正捕手のルーツを辿る

金子千尋の去就で話題になった2014年ストーブリーグだが、残留の決めてとなったのは最優秀バッテリー賞を獲得した“相方”の存在があったからだろう。

その相方の名前は伊藤光

若干25歳という若さから高卒新人としてオリックスの正捕手を務め、侍ジャパンメンバーにも選出。
名将・岡田前監督から絶大な期待が寄せられ、またチーム事情からも積極的に起用されてきた。
将来が期待される“日本の正妻”候補の名が今後さらにブレイクすることは間違いない。




プロフィール

伊藤光

伊藤光(いとう・ひかる)

【出身地】
愛知県岡崎市

【生年月日】
1989年4月23日

【身長・体重】
180cm/80kg

【投打】
右投右打

【守備】
捕手

【プロ入り】
オリックスバファローズ
2007年 高校生ドラフト3巡目
明徳義塾高校

【性格・プレースタイル】
捕手としてのリードは定評があり投手のその日の状態で組み立てる。
捕手らしからぬ瞬足で50mは6秒、遠投は120mと強肩。

その甘いマスクはオリ姫(オリックスの女性ファン)から絶大な人気を誇り、球界一の「イケメン捕手」として他球団の個人的なファンも多い。
しかし彼女の有無や結婚報道など浮いた話やゴシップも聞かれず未だ独身。

2014年シーズン最終戦でソフトバンクに敗れ優勝が決まった試合では本塁上で涙を流し動けなくなるなど、その真面目さや一生懸命さが伺える。

主な同期入団選手

中田・唐川・由規ら高校BIG3で話題になった「超豊作」と言われた世代。
その影に隠れ当時の伊藤は名門明徳義塾高校出身ながら甲子園には一度も出場しておらず、スカウト以外の世間の認知度は低かった。

主なドラフト指名選手
日本ハム・中田翔(大阪桐蔭)4球団競合
千葉ロッテ・唐川侑己(成田)2球団競合
ヤクルト・佐藤由規(仙台育英)5球団競合

ソフトバンク・大場翔太(東洋大学)
ソフトバンク・中村晃(帝京高)
日本ハム・多田野数人(3A・サクラメント)
日本ハム・宮西尚生(関西學院大学)
楽天・聖澤諒(國學院大學)
広島・篠田純平(日本大学)
広島・松山竜平(九州国際大学)

なお、オリックスから指名を受けた伊藤以外の選手は全員プロ野球界を去っており、同僚のチームメイトはいない。
2010年春季キャンプ中に自殺した小瀬浩之とも同僚である。

オリックスの指名選手
大・社1位:小林賢司(青山学院大)⇒2012年戦力外
大・社3位:小瀬浩之(近畿大)⇒2010年2月5日死去(満24歳没)
高校1位:丹羽将弥(岐阜城北高)⇒2012年戦力外
高校4位:山崎正貴(市立船橋高)⇒2014年戦力外
育成1位:梶本達哉(四国IL愛媛)⇒2011年戦力外

2007年度新人選手選択ドラフト会議 選手一覧

年俸推移

2007年(18歳):契約金5000万
2008年(19歳):500万
2009年(20歳):520万(↑20万
2010年(21歳):520万(±0)
2011年(22歳):580万(↑60万
★岡田監督就任、1軍と2軍を行き来

2012年(23歳):1800万(↑1220万
★自己最多66試合に出場し1軍定着

2013年(24歳):2200万(↑400万
★小久保裕紀の引退試合で西勇輝とバッテリーを組みノーヒットノーラン達成

2014年(25歳):4800万(↑2400万
★副選手会長に就任、137試合に出場し初の規定打席クリア、オールスターにも初選出

2015年(26歳):7200万(↑2400万
★選手会長に就任、ベストナイン・ゴールデングラブ賞・最優秀バッテリー賞(投手:金子千尋)を受賞、侍ジャパンのメンバーにも選出され知名度が飛躍的に向上

長らく正捕手不在が続いていたオリックスにとって、また日高剛のFA移籍、鈴木郁洋の引退等で伊藤にチャンスが恵まれる機会が多く運も兼ね備える。
年俸が下がった年はなく日々進化を遂げている。

2015年プロ野球契約更改 全選手年俸一覧

通算成績

【2008年 プロ1年目】

1試合 打率—

★初出場:2008年9月13日 対日本ハムファイターズ
7回裏に日高剛に代わり捕手で出場

リーグ:2位(75勝68敗1分)
監督:コリンズ(~5/21)、大石大二郎(~8/1監督代行、8/2~監督就任)

※新人王 山口鉄也(巨人)、小松聖(オリックス)
伊藤の世代からは以降も選出されなかった

【2009年 プロ2年目】

1軍出場機会なし

リーグ:6位(56勝86敗2分)
監督:大石大二郎

【2010年 プロ3年目】

2試合 打率.000(4-0)

リーグ:5位(69勝71敗4分)
監督:岡田彰布

【2011年 プロ4年目】

66試合 打率.156(160-25)本塁打2 打点11

★プロ初安打:2011年4月13日 対ソフトバンクホークス(投手:ホールトン)
★プロ初盗塁:2011年4月17日 対東北楽天
★プロ初打点:2011年4月20日 対日本ハムファイターズ(投手:ウルフ)
★プロ初本塁打:2011年5月25日 対ヤクルトスワローズ(投手:松井光介)

◆8月30日 金子と初のバッテリーを組み勝利
対ソフトバンク 7回8安打1失点(122球)
◆寺原隼人、西勇輝と主にバッテリーを組み活躍
◆盗塁阻止率はチームトップの.318を記録
◆本年の活躍により背番号が「22」に変更となった
◆バッティングが課題であることを露呈した

リーグ:4位(69勝68敗7分)
監督:岡田彰布

【2012年 プロ5年目】

66試合 打率.205(176-36)本塁打0 打点10

◆好不調の波があり1軍と2軍を行き来、それでも前年と同様の成績をマーク
◆課題であった打撃において改善を測り2割まで持って行って
◆小久保裕紀(ソフトバンク)の引退試合において西勇輝とバッテリーを組みノーヒットノーランを達成“してしまい”、後に語り継がれる伝説となった
◆翌年より副選手会長へ就任される

リーグ:6位(57勝77敗10分)
監督:岡田彰布(~9/25)、森脇浩司(監督代行)
※球団創設至上最多となる12連敗を記録

【2012年10月8日 小久保苦笑い…引退試合でオリックス西がノーノー達成】

【2013年 プロ6年目】

137試合 打率.285(410-117)本塁打3 打点40

★オールスターゲーム出場(初)

◆鈴木郁洋の引退、日高剛の阪神FA移籍など正捕手・2番手捕手がいなくなったことによりチャンスが到来、一気に正捕手の座を掴んだ飛躍の年
◆オリックスでの100試合以上捕手として出場したのは2008年の日高以来
◆後の侍ジャパンの候補となる選手を集めた「2013 BASEBALL CHALLENGE 日本 VS チャイニーズ・タイペイ」にも選出

リーグ:5位(66勝73敗5分)
監督:森脇浩司

【2014年 プロ7年目】

137試合 打率.257(358-92)本塁打3 打点48

★オールスターゲーム出場(2年連続2回目)
★ベストナイン(初)
★ゴールデングラブ賞(初)
★最優秀バッテリー賞(初、投手:金子千尋)
★刺殺945、守備率.997はリーグ最高を記録

◆侍ジャパンメンバーに選出
◆リーグ最終戦までソフトバンクと優勝を争い、松田にサヨナラヒットを打たれ2位で敗れた

リーグ:2位(80勝62敗2分)
監督:森脇浩司

【2014年10月2日 選手・監督・ファン両軍・実況までも涙、球史に残る感動の優勝決定戦】

最終戦の涙の理由として伊藤は次のように語っている。

小中高、プロに入っても「あと一歩」

「プロに入ってもまたこれか」って。「僕の野球人生、こんなんばっかりやなー」という気持ちでした。僕は小学校も中学校も高校も、常に「あと一歩」というところで負けてきた。(明徳義塾)高校2年も3年も、夏の県大会決勝で負けて、一度も甲子園に出ていません。僕が「あと一歩」という人間だから、また自分がキャッチャーをやっているから負けたのかなとか、僕の人生はこんなもんなんだなと思ったら、あの場から動けませんでした。(中略)

引用:スポーツナビ『オリ伊藤光、涙の理由「またこれか」』

伊藤光と金子千尋

優勝などチーム成績に関係なく年間を通じて活躍し、選考基準をクリアしたバッテリーに送られる最優秀バッテリー賞。

2014年に受賞したのは金子千尋-伊藤光のバッテリーだ。

伊藤は金子について「他のキャッチャーには受けさせたくない」と話すほど特別な存在として誰よりも認識しているという。

2人が初めてバッテリーを組んだ試合は2011年8月30日のソフトバンク戦。
金子は前回試合に8失点していたため、それまでバッテリーを組んでいた鈴木郁洋が実質的に金子の正妻を“クビ”にされた。

転がってきたチャンスを伊藤はものの見事に掴み取り、この試合は7回1失点の好投で勝利。
次回登板の9月4日対楽天にも金子とバッテリーを組み完璧にリード、9回3安打の無四球完封勝利。

完全に金子専属捕手の座を勝ち取ったかのように見えたが、9月11日対西武の試合で中村剛也との本塁クロスプレーの際、右手人差し指を骨折して全治1ヶ月半と診断され、残りシーズンを棒に振ってしまった。

翌2012年は金子の方が通年に渡り怪我に悩まされ、4年間続いた2桁勝利もストップ。
伊藤は「金子さんとバッテリーを組むことを夢見て1軍に這い上がってきた」と話すほど金子に対する思いは強かったが、1軍定着後もその思いがなかなか実らずにいた。

そして迎える2013年、伊藤の思いは届いた。
金子が登板した29試合全てにマスクをかぶり、また自身最高の137試合に先発出場。
田中将大の怒涛のシーズン無敗(24勝無敗)の影に隠れたが、金子は沢村賞としての選考基準を全て満たし、完投数・投球回・奪三振において田中を上回った。

沢村賞の受賞は田中に譲ったものの、金子活躍の立役者は間違いなく伊藤光。

2014年にも伊藤は金子の“正妻”としてリードし、沢村賞・最多勝・最優秀防御率・最優秀バッテリー賞、そしてシーズンMVPを獲得。

同年に行われた日米野球においても伊藤は金子の登板試合にマスクをかぶった。

結果は5回3安打3失点、実戦から離れていたこともあり固さがあったが、そのような試合では伊藤がバッティングで先制点をプレゼントするなど息の合ったプレイを見せた。

【日米野球 第2戦 侍ジャパン 対 MLB 先発:金子千尋】

「日本球界No.1」と誰からも認められる存在になった金子はシーズンオフにFA権を行使しメジャー挑戦を表明。
去就に注目が集まったが「オリックスで優勝したい」という思いから残留を決意し、オリックスと4年20億円という破格の契約を結んだ。

2015年も2人の息の合ったピッチングをまた見られるかと思えば、ファンはたまらないだろう。

それに伊藤も金子とバッテリーを組むことを夢見て這い上がってきた。
実質シーズンを通じてバッテリーを組んだのはこの2年間のみ。

もっともっと彼らのピッチングを見たい。

さらに言えば今年のオリックスは一味も二味も違う。
FAで中島裕之(アスレチックス)、小谷野栄一(日本ハム)、バリントン(広島)、ブランコ(DeNA)を獲得。

さらに2014年の大躍進を支えた糸井嘉男、平野佳寿、馬原孝浩、坂口智隆らも自身のFA権を行使せず残留を表明した。

優勝大本命であるこのチームを牽引するのは伊藤光
2015年から副選手会長から選手会長に就任。

何が起きるかわからないのがプロ野球であるが、最も目を離せないのがオリックスバファローズであることは間違いない。

そして伊藤光という選手を皆さん是非覚えていてほしい。